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月煮ゆう「+αの立ち位置」感想‐地味女子が美少女と二人で異世界トリップしたらどうなる?

 

+αの立ち位置 1巻 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)

+αの立ち位置 1巻 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)

 

 発売からめっちゃ時間経ってますがこれは感想を書いておきたかったのでちゃんと書きます。

ゼロサム系新連載紹介ブログとして地位を確立できるようがんばりたいですし(?)

枋間識希は、ヒロインを夢見ながらも自らの地味さゆえに無理だと思っている妄想大好きな脇役タイプ。そんな彼女が華やかすぎて誰が見ても美少女の転道花華 と共に、なぜか異世界へ「創造の神娘」として召喚されてしまった。異世界で待ちかまえていた美青年達はもちろん美少女である花華を神娘として迎えるが、実は識希も大きな秘密を抱えることに…。

というわけでこんな感じのゼロサムオンライン連載作です。

現在1、2話と二巻収録分はオンラインで無料で読めます。

+αの立ち位置 | ゼロサムオンライン | 一迅社オンライン

なので最新話分まで一気に感想書いてしまいます!

一巻は読んだけど二巻収録分を読んでいない、っていう方はご注意。

 

乙女ゲーム少女小説のヒロインよろしく美青年たちとフラグを立てまくりながら果敢に神娘として戦う正統派美少女・花華(ハルカ)を、本来持つはずでなかった(と思っている)神娘の能力を得てしまった地味女子・識希(サトキ)が傍観するような感覚の異世界トリップファンタジーもの。

たぶんなろうとかに同じようなものがたくさんあるのではないかと思います。なろう見ないんで多分ですけど。あると思う。だってこじらせた女子オタクがめっちゃ考えそうだもの。

 

妄想が好きで、ヒロインに憧れているけれど、「目立ちたくない」「自分みたいな地味な女がヒロインなんて」と思っている主人公・サトキは、体育会系で明るい正統派美少女・ハルカに巻き込まれる形でファンタジーな異世界に召喚されることになります。

戦争で国と王を助ける伝説の少女「創造の神娘」として召喚された二人ですが、神娘は一人のはず。面食いな神官(腹黒美青年)や周りの人間は、迷わず美少女・ハルカを神娘とします。冴えない見た目のサトキではなく。

神娘の付き人として扱われ、美青年たちには相手にもされないサトキですが、自分が神娘の特殊能力である「想像した武器を具現化する」能力を持っていることに気付いてしまいます。そして、神娘となっているハルカはどうやら武器を出すことができないことにも。

しかし、だからと言って「私が神娘です」なんては言い出せない。

神官だけでなく、騎士も、民も、すべての人々は、美しい少女・ハルカに世界を救う伝説の少女の期待をかけている。地味で暗い自分は求められていない。ハルカこそがふさわしい。だから自分が神娘だなんて明かせるわけがない。

サトキはとにかく自己評価が低い子です。本当はヒロインに憧れ、誰かに必要とされたいと思っているけれど、「周りが望んでいないから」と理由づけをして自分の能力を誰にも打ち明けられません。打ち明けないことを選びます。

そして誰にも気づかれないよう能力を使い、ハルカを神娘として成り立たせ、国を勝利に導くという難題を背負う道を選ぶわけです。

そのことを知っているのはサトキと、サトキの能力に気づいた魔術士長だけ。サトキの孤独な戦いの始まりです。

 

で、この作品の面白いところは「ヒロインを傍観する」と言っても、ハルカが抱え込まれている王城からサトキが早々に追い出されているところです。

基本的にハルカがどういう風に考え、行動して、彼女にどういう出来事が起こっているかをサトキは知らない。

たまに会うと王城のイケメンたちがどんどんハルカに惚れ込んでいて、知らないうちに大量のフラグが立っていることがわかるけれど、ハルカとサトキはただのクラスメイト、顔見知りでしかないし、ヒロイン気質のハルカは「これ以上巻き込んじゃけない!」とサトキに自分の気持ちを打ち明けたり相談することはありません。

とにかく読んでいるこっちも蚊帳の外感が強い。(それがギャグになってて面白いんですけど!)

ハルカがどういう選択をしているのかわからなくても、サトキは彼女の代わりに武器を創造しなくてはならないわけで、それもまたプレッシャーです。「転道さんの意志と違う選択をしてしまったらどうしよう?」という不安が常にある。そもそも、彼女が本当に神娘をやりたい、やるべきだと思っているかどうかも分からない。

そして蚊帳の外でハルカを見れば、何の能力もないただの少女である彼女が国という重いものを背負わされているのがよくわかる。

「自分が名乗り出せば、彼女にこんな重荷を背負わせることはなかったかもしれない」「本当にこの選択でよかったのか?」

心のどこかで悩んでいるサトキに、神娘だと言えるかもしれないチャンスは何回か訪れますが、その全部でサトキは「打ち明けない」という選択をします。「主人公」という肩書は、自分には重すぎるから。誰もそれを期待していないから。

サトキは常に低い自己評価と、「主人公」への憧れ・羨望、それから承認欲求で揺れています。

このウジウジっぷりも特徴的で、面白い部分かと。

誰かに必要とされたい。モブじゃなくて、神娘のオマケじゃなくて、枋間識希として必要とされたい。

それでも「自分には主人公は不釣り合いだ」と自分を言いくるめて、サトキは自分の能力を隠し続けます。その様は必死で、無様で、痛々しい。

 

と、ここまでが一巻。

その後、サトキは傍観者から一気にメインキャラクターへと押し上げられることに。

敵軍にサトキの能力がばれ、「真の神娘」としてロックオンされたり。

ハルカも能力を持っていて、それこそが本来の「創造の神娘」の能力であることが判明し、サトキが神娘でないと確定したり。

それで肩の荷が下りたのもつかの間で、王位継承問題に巻き込まれ、王弟(腹黒美ショタ)に脅され、ハルカを偽神娘として追放する策略に加担させられることになったり。

サトキは自分の本当の意志を誰にも言えることなく、流れにそのまま乗せられて、ハルカとも決別し、新たに仕立て上げられた神娘の能力の肩代わりをすることに。

考えることを諦めようと思っても、やっぱり諦められない。だけれど王弟に逆らえない。優柔不断な自分に自己嫌悪する。唯一の見方だった魔術士長も、逃げ出したハルカを追いかけて、自分を救いにはやってこない。

うじうじするサトキが今後どうなっていくのか、というのが今月更新分まで。一気に話が動いていよいよ本番!という感じがします。とっても楽しみ。

 

コテコテな女性向けトリップファンタジー設定に、知らないところでどんどん展開する乙女ゲー展開にクスっとしつつ、どんどんうじうじしていくサトキと国の行方が気になり、ゼロサムオンラインで今面白い作品トップ3(当社比)だと思います。

サトキのウジウジはとってもめんどくさいのだけれど、親近感は湧くしそこが良い。

イケメンも盛りだくさんですし、コメディとシリアスのバランスもよくて良い作品だと思います。

割と休載が多いのを除けばね……うん……。二巻はいつまとまるんだ……。