ぐるぐる読書備忘録

腐った女子の漫画(女性向け中心に何でも)・小説(ミステリ中心)感想ブログ。

杉本ゆう「探偵アプリ」感想-伝えなければ、伝わらない。猪突猛進女子とスマホ探偵のドタバタ人情劇

 

探偵アプリ (ゼノンコミックス)

探偵アプリ (ゼノンコミックス)

 

ブログ説明文にも掲げてる通り、割かしミステリを読みます。読むんですけど、パズル的な読み方は全然できません。求めているのは物語で、ロジックはスパイス。もちろんスパイスが利いてるほうが俄然楽しめるのですが。

もっと言えば私は「探偵」萌えなのです。

人より頭が回って、自信家で、偏屈で、我々凡人とは違う世界に生きて、違う世界が見えている名探偵。そういう人に萌えるのです。

なので、「探偵」と名が付いたり、「ミステリー」って帯で謳われている漫画には思わず手が伸びます。そういう時の「ミステリー」が十中八九私が求めてるミステリじゃないのは知ってるんですけど!!本格ミステリみたいなのはないって知ってるんですけど!!!!いやでも万が一があるじゃないですか??ね???たまにあるんですよね、そういう方向でも当たりが。大体コレジャナイんですけど。

で、今回の「探偵アプリ」。これはですね、ミステリ読み的にはコレジャナイ。けど、漫画としては結構面白かったと思うので感想を書きます。以下公式のあらすじ。

ケータイに閉じ込められた天才探偵! 抜け出す方法は…謎解きのみ!「解けない謎はない!」と噂の敏腕探偵・田淵(お金大好き)の元に、過去の事件で助けられて以来、ベッタリつきまとう女子高生・アゲハ。謎のアプリ「探偵アプリ」によって、スマホの中に閉じ込められてしまった田淵は、元の姿に戻るため、しぶしぶアゲハの言いなりに事件解決に挑むが…。 謎が謎を呼ぶ★新感覚・ドタバタミステリー♪

全然謎は謎を呼んでないしミステリーでもないんですけど、この手の表記にはもう慣れた。もう慣れたのだ。(わかりづらいネタ)

創作界隈だと「探偵」って二種類の意味を持っちゃうんですよね。

ひとつは所謂ミステリーの「探偵」。コナンくんとか、ホームズとか、金田一とか、そういう感じの「殺人事件のトリックを暴く」「謎を解く」系の「探偵」。で、もうひとつは一般的な意味での「探偵」ですね。浮気調査したり、身辺調査したり、迷い犬探したりするような。

で、漫画とかの宣伝だとすぐこれがごっちゃにされる!別物なのに!ややこしい!!いやまあ前者が「探偵」を名乗ってるからめんどくさいんですけど。悪いのは我々なんですけど。

で、今作の「探偵役」、田淵さんはこの二つの中間な立ち位置かなと。ハッカーを捕まえたりしてるので。でも別に人死にが出たり「謎」を解く話ではあんまりないんですよね。ちなみに田淵さんのキャラデザがもじゃもじゃ無愛想系イケメンで良いです。探偵っぽい。いいですよ。

主人公・アゲハが田淵信者になったのは、夫(アゲハの父)に出て行かれて自暴自棄になって行方不明になって母親を見つけて連れ帰ってくれたのが田淵さんだから。そんな田淵さんに憧れて、「人の役に立つことをしよう!」とアゲハは動き回ります。(ちなみにこのお母さんもイケメン田淵さんのファンになって今では元気に!すごいぞ田淵さん!)

身の回りのいろんな厄介ごとを解決しようとするアゲハですが、彼女は勇気と熱意とガッツがあってもいまいち頭は回らない。ガンガンの行動派です。なので、頭脳部分を補ってもらおうと田淵さんに付きまとうわけですね。

そんなアゲハを追い払おうと田淵さんが出してきたのが問題の「探偵アプリ」。

音声で依頼を入力して、アプリが推理した犯人をカメラで撮影すればいい、というスマホアプリだそうですが、いろいろあってそれでアゲハが田淵さんを撮影したところ、何と田淵さんがスマホに取り込まれてしまったのです!

で、そんな田淵さんをスマホから救出するために依頼を入力・解決して、犯人を撮影する必要があるというわけです。

依頼とか犯人とか言ってますが、実際に「犯人は誰だ?」というフーダニット的なことが行われるのは一話のみ。アゲハの陸上部に入っている同級生のスパイクとユニフォームを切り裂いた犯人は?という依頼です。

この一話はちょっとミステリーっぽい感じですが、犯人を捕まえるまでには「アプリとしてメールでスマホ間を移動できたり、スマホを好き勝手動かせる」というスマホに取り込まれた田淵さんのチート的能力が役立つのでまああんまりミステリーじゃないですね。

他の話数では不登校の男子を学校に連れて行ったり、奥さんに家を追い出された先生と奥さんの間を取り持ったり、アゲハが殺人未遂で逃走中の犯人に誘拐されたり(!)、と「ミステリー」っぽくはないです。決して。

人を助けるにあたって、「何がこの人の問題になっているのか?」「その問題を解消するためにはどうすればいいか?」を田淵さんがスマホの中から探って、アゲハが動いてぶつかって相手の心を開く、助けていく、という流れがメインです。

で、このマンガの何がいいって、アゲハのキャラがいいんですよ!

真っ直ぐで、熱血で、いつでも誰かを助けようと一生懸命。頭は回らないけれど行動力はある。感情がどんどん表に出る。ちゃんと言葉で気持ちを伝えられる。それが他人の心を動かせる。

「伝えなければ伝わらない」が今作のテーマだそうで、そうなるとやっぱり主人公はアゲハだなーと思うわけです。

アゲハは自分の想いを他人に伝えるときに臆しない。自分が考えて、正しいと、相手のためだと思ったことはしっかり相手に伝えます。口だけじゃなくて手や足が出ることもありますけど……まあそれはご愛嬌。私は拳で解決する系女子は好きですよ。

 

個人的に好きなのは、不登校の同級生・龍介を学校に通わせる二話と三話ですね。

龍介は火事で両親を失って、姉と二人暮らしの高校生ですが、その火事が起きたのが自分の部活が長引いて帰りが遅くなった日で、しかも両親が家にいたのは自分の誕生日を祝うためだったということで少しだけ罪悪感のようなものがあるようです。その上、自分のために必死に働いている姉との二人暮らしを周りに茶化されたり、何もかもを「親がいないせいだ」と言われたりするのが苦しくて、可哀相だと哀れまれるのも嫌で、不登校になっています。

そういった気持ちを龍介が吐露したときに、アゲハが言ったセリフがいい。

「幸せなんですね」

「ご両親があなたのサプライズパーティーをしようとしてたんですよね」

「お姉さんがあなたのために必死になってくれてるんですよね」

「私には 幸せ自慢にしか聞こえませんよ」

 火事で両親を失った少年に、こんなこと言えますか? 私なら言えないです。多分ものすごーく困って、言葉に詰まります。でもアゲハはこう言うんですよね。すごく優しい笑顔で。

その後、久しぶりに登校した龍介を連れたアゲハが教室で言った言葉もめっちゃいいです。ここぞというときのアゲハの台詞はとにかく真っ直ぐで、真剣で、世界を切り開いていけるような力がある。アゲハは良いキャラです。

あと物語には関係ないですけれど、大好きな田淵さんがスマホに入って自分の手で持ち運べて一緒にいられることにはしゃぎまわるアゲハがすっげーーーかわいいのです。もうとにかくアゲハのキャラがツボなんです。かわいいしすごいぞ!

 

つらくて、かなしくて、誰かに頼りたい、吐き出したいけれど、それができない。

そんな人たちにアゲハが真っ向からぶつかっていって、話を聞いて、未来に引っ張っていく。ちょっと強引でもアゲハが真剣なので、人の気持ちを動かせる。

そういう感じで、清々しさのある良いマンガでした。

 

全然田淵さんの話してないけど田淵さんもちゃんと動いてるしかっこいいよ!

あと装丁がちょうかわいいです。この装丁だから買ったともいえる。

 

ちなみに今作、公式サイトで一話試し読みができます。もし私の感想で興味を持った方がいらっしゃれば是非どうぞ。

ころころ表情がかわってかわいいアゲハちゃんをご堪能あれ!

http://www.comic-zenon.jp/tachiyomi/pc/tantei_appli.html