藤緒あい「極上ビーフカレー秘密入り」感想/ホクロフェチの変態イケメンだ!!
最初の記事でも書いたんですが、ここ一年くらいずっと短編集含む一巻完結少女マンガにハマっています。
なんで一巻完結少女マンガが好きかって、こう、手軽にラブストーリーやときめきを得られるっていうのもあるんですが、一巻完結や読み切りの少女マンガってすごいインパクト重視のものが混ざってるって言うか、いわゆる出オチみたいな設定のものが結構あって、力技でそれをまとめ上げてるようなものを読めて、それがいいんですよね!何か!
あと恋愛至上主義とか運命至上主義みたいなものはアツいです。つべこべ考えてんじゃねーよ!この世は愛だろ愛!みたいな強引さとハッピーエンド!清々しい!!
そういうものが読みたいことが多いので、一巻完結少女マンガを漁っているわけです。新人さん発掘にもなりますしね。
で、この短編集が当たりか外れか、どっちだったかっていうと当たりでした。一発目からすごい当たりでした。
イケメンだ!変態だ!ホクロフェチだ!
一番最初に収録されてる短編「ブラックホールは突然に」がすごいよかったわけです。大学生もの。もうこれがすごい出オチ。
相手役が爽やかな王子様系イケメンなのですが、これがド変態なのです。それも口元のホクロフェチとかいうピンポイントできっと超ニッチな変態!ホクロのそばについたご飯粒を取るだけで興奮してムラムラしちゃうような変態!すごい!!出オチだ!!!
すれ違いざまに主人公・ユカの口元のホクロが自分の理想のホクロだと気づいたイケメン・タケヒロの一目惚れ・いきなりの告白で二人の関係は始まっているわけですが、あんまりイケメンに興味がないというユカは一旦断ります。
でもそれに対して「君の口元のホクロが理想にぴったりなんだ…」とか言ってホクロをガン見してくるようなタケヒロになぜかちょっとだけキュンとしてしまって、「おもしろいからまあいいか」と付き合い始めるユカもユカです。
いかにホクロを魅せてタケヒロを戸惑わせるか、なんてやってるのだから大概です。
あ、タケヒロくんはホクロに興奮するド変態ですがどちらかといえばワンコ系みたいな、尽くすタイプなのがまたいいと思いますね。主導権はユカにある。
どちらかといえば冴えないユカに対して、タケヒロは超イケメンで大学ではモテモテなので、ユカは「あんな女が何で付き合ってんの?」「あれなら私の方がかわいいのに」みたいな感じで他の女子生徒から嫌味や陰口を言われたりします。
でもユカにとってはそんな陰口、屁でもないわけです。
だってタケヒロにとって重要なのは普通の美醜ではなくて、口元のホクロただ一つだから。どんなにかわいくっても何でも、口元のその位置にホクロがない限り、タケヒロにとって何の価値もないのです。
その一点だけでどの女子にも絶対的な有利性を持っていると余裕を見せるユカですが、「あれなら私の方がかわいいし、がんばっちゃおうかな~」なんて陰で言っている女子(かわいい)の口元には、何とユカと同じ位置にホクロが!
同じ位置にホクロを持つ(しかもかわいい)ライバルの登場にユカは動揺します。余裕ぶって「第二のホクロ女現る、ってね」なんて内心で茶化してみたりはしますが、本当はすごく動揺して不安を感じます。ホクロの位置で運命を感じた、とまで言われたユカなので。
「ソレが同じなら、普通の男みたいにかわいい女の方がよかったりすんの? その女にも運命感じんの?」
なんて勝手に絶望して、おんなじ位置にホクロさえあれば誰のでもいいんだろなんて思ったりして、別れを切り出します。マスクでホクロを隠して。
でもタケヒロはド変態なので、隠されたホクロにも興奮します!ひでーイケメンだな!!
勿論最後はハッピーエンドです。「誰のホクロでもいいわけないじゃん!」というオチなのですが、もうそのタケヒロの主張がまたすげーキモい!ユカも「果てしなくきもい!!」なんて思う!でもそれにときめいちゃう!
ということでお似合いな二人の痴話げんかなのですが。
こういう出オチな設定でも、「冴えない私とモテモテの君」とか、「たまたま私がそうだっただけで誰でもいいんじゃないの?」みたいなモヤモヤとか、少女マンガの王道要素はしっかり押さえてます。そして最後に勝つのは愛だ!!こういうのがあるから読み切り少女マンガはいい!!これだけでもみんなにおススメしたい!!!
というスタートダッシュですが、他には、
結婚して数年、旦那にときめきを感じなくなってきた女性がパート先の新人年下男子に言い寄られてドキドキしちゃう「もうすこしで、いつか永遠」(しかし最後はハッピーエンド)
高身長で美人で仕事ができる、高校時代は女子校の王子様だったOL(ちょい男性不信気味)が男子中学生に告白されて付きまとわれてトラウマを克服する「きみの水色」(もちろんハッピーエンドだ)
自分に気のありそうな女子を食いまくってるイケメン男子大学生の、同居している兄夫婦には言えない「秘密」の話な表題作(きっとハッピーエンドだ)
出張先で同僚女子とワンナイトラブして以降、妻が編み続けている真っ赤な編み物が気になる子持ちリーマンのお話「永久レッドカーペット」(ハッピーエンドです)
という感じでバラエティ豊かにハッピーエンドな五作収録です。
「永久レッドカーペット」もなかなかに個性的な短編で結構いい。
あとヤリチンイケメン(ひどい言い方だ)の真実、みたいなのも割と好きなので表題作も楽しめました。
全体的に暗い感じの無い、ハッピーな短編ばかりで読みやすかったです。
というわけで今回はなかなかに当たりなジャケ買いでした。
とにかくホクロフェチイケメン・タケヒロのキモさがすごくよかったので、それだけでも読む価値ありますよ、マジで。