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ムノ「終電エレジー」感想-せつなくて、やさしくて、しあわせなふわふわBL短編集

 

終電エレジー (IDコミックス gateauコミックス)

終電エレジー (IDコミックス gateauコミックス)

 

表題作で、gateau本誌デビューした作家さんの初短編集ですです。

表題作含めて五本の短編+描き下ろしが入ってますが、短編のうち三本はweb掲載となってます。個人サイトかピクシブで作者さんが載せてらしたのかな~。(調べてない)

gateauは月刊化して以降、ネットで活動してる作家さんをたくさんデビューさせてますが、ムノ先生は元々一次創作BLをやっていた方なんですね。絵も漫画も上手いと思います!ふわふわっとして、かわいいけれどちょっとさみしい雰囲気のある絵柄がたまりません。好みです。

で、gateauレーベル全体に言えることなんですけど、コミックの装丁がめっちゃくちゃかわいい!!アマゾンの画像は帯無しですが、帯付でもかわいいです。というか帯のキャッチコピーが良い。

というわけであらすじとコピーを公式から引用してみましょう。

君と迎える、終着駅。

駅のホームで出会った、けんじとタマ。

彼氏にふられたと丸くなって泣くタマが、まるで猫みたいで、
赤くなった目に睨まれて、一目惚れが本当にあるんだと知った。
会うたびに好きになるのに、タマは元彼のことを話し、笑い、泣く。

それなのに突然、キスをしてきて――。

好きだからこそ、背中を押す。
そんな優しさもあるんだって、君に知ってほしい。

優しく切ない恋のお話、詰め込みました。

「君と迎える、終着駅。」!すてき!詩的!

本誌のほうで表題作は読んでいたので、作品内容は知っていたのですがこのコピーはビビッときちゃいましたね。とってもいい。

このコピー自体は作中にはない文章ですが、作中のモノローグもちょっと詩的な、やわらかなものが多くて近い雰囲気があります。このモノローグもすごくいいです。雰囲気有ります。

 ちなみにこの表題作は大学生もの。後は高校生ものが三本、社会人ものが一本という内訳です。あと、BLですがいわゆる濡れ場は一回のみ。まあいつものgateauですね。キャラの心情描写と、二人が幸せになるまでの過程がメインになっています。

さて、既にべた褒めな感じですが、各話ごとの細かい感想行ってみましょう。(ネタバレは少な目です)

逆走エスケープ

gateau本誌に掲載されていた読み切り。これ本誌で読んだ時に結構気に入っていたので最初に載っているのがちょっと嬉しい。

高校生の先輩後輩もの。で、割とコメディタッチ。フラれてもめげずに好き好きアピールしまくる学内ストーカー後輩くんと、後輩くんを鬱陶しがりながらもちょっとだけ意識し始めているノンケ先輩くんがくっつくまでのお話です。

BLではお約束な「相手が男」ということがひっかかってなかなか素直になれないというパターンで、素直なプロットだと思うんですけど、後輩くんのキャラがとっても良い。学内で堂々と先輩をストーカーして、好き好きアピールして、周りからは「アホの子だ」とか「あいつほんとにホモなの?」とか言われてる。けれど気にしない。先輩に「女しか好きになれないよ」とか言われても、「俺、多分落とせると思うんですよね」と爽やかスマイル。良いキャラです。

終始しあわせなにやにやできる短編。

alone again

こちらも学生もの。ちょっと切なめ。個人的にはこれが一番好き。

クラスの中心でいつも人に囲まれている綾瀬くんと、彼に片思いしている所謂「陰キャラ」な遠山くん。人に嫌われるのを恐れて必死にクラスの中心にいようとする綾瀬くんに、ずっと遠巻きに見ているからこそ気付いている遠山くん。その二人が一緒に日直をやったことによってぐっと距離が縮まる話なんですけど(超ざっくり)、めっちゃ好みでした。

人に好かれて、人に囲まれて、いつもにこにこしているけれど、どこか孤独でちょっとさみしそうな人っていうのがものすごく好きなので、綾瀬くんはドンピシャです。

友情と恋愛感情があやふやになってしまう感じもとってもいいです。オススメ。大変に良い。

空気の境界

キャラの年齢設定は社会人ですが、実際中学からの友人との話なので社会人ものというには微妙かな~という気も。

主人公にあたる恭介は、中学の頃からオープンゲイで、彼氏を作ったりしつつ、実際のところは幼馴染の優と遊ぶ方が楽しいからと、しょっちゅう三人で遊んでいたという空気の読めない感じのあるキャラ。で、そんな恭介が高校卒業以来疎遠になっていた優と街中でバッタリ再会するわけですが。

友情と愛情の切り替えってBLの永遠のテーマですよね~。優が愛重たい系でどろっとしてていいです。恭介も空気読めない能天気系のようでいて実は違う感じなのもいい。

赤と青

これまた友情と愛情の区別が主題の話ですね。この本一番のコメディ話かと。

ちょっとアホの子なアカネがちょっとボンヤリした感じのアオイに恋を教えてやるぜ!っていう話です。(超ざっくり)

アカネの表情がくるくるかわるのがかわいい。すぐ照れたり期待したり凹んだりとてもかわいい。

描き下ろし四コマとしてこの二人のその後がちょこっとだけ描かれてますが、それもアホでほのぼのでいいです。

終電エレジー

表題作。これがgateauデビュー作ですね。あらすじは公式から引用した通り~。

お互いがお互いの優しさにつけこんで、さみしいところを埋め合わせようとするのがずるずる続いて、そこから一歩踏み出す強さ、みたいな。そういう感じの話かなと。

どの作品もモノローグの言葉選びがやさしくてきれいでとても良いのですが、今作はそれが飛び抜けて良い、気がする。語り手になっているケンジがそういう人なのかもしれません。酔っぱらって歌いながら電車を降りたりしてるし。

総評

全体的にプロットは素直で王道かなという印象。

でも最初に書いたとおり、絵柄と画面づくり、言葉選び、あとちょっとのキャラデザインに個性があって、独特のやわらかい雰囲気が出ているように思います。

やさしくてしあわせだけれど、ちょっとさみしい。みたいな感じがとても好きなので、今後もgateau本誌でどんどん作品が見れたらいいなと思います!欲を言えば連載とか!

というわけで結構オススメな一冊でした。おわり。